紙魚家崩壊 九つの謎
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人気ランキング : 14148位
定価 : ¥ 1,575
販売元 : 講談社
発売日 : 2006-03 |
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平凡な日常にこそ怖さが… |
装丁、インパクトのある『紙魚(しみ)家崩壊』というタイトル、そして北村薫。TVで見て本屋に走り、店頭で見て衝動買いしてしまいました。
何気なく目にした健康雑誌の求人広告がきっかけで就職し、念願の1人暮らしを始めた美咲。ある日、コンビにの雑誌コーナーで目にした漫画に釘付けになった美咲は、そこに店長そっくりの姿を見つけ、思わず買い求めてしまう。そして、コピーし手を加えていくうちに、つい夢中になって…『溶けていく』ほか8編
日常の中のミステリや、何気ない平凡な生活の中にひそむ悪意の怖さがしみじみと伝わってきて…それぞれが味わい深く最後までひといきに読んでしまいました。
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日常生活の中のミステリ!? |
本書では90年代に発表された短編ミステリを主にまとめて、2004年?2005年に発表された新釈おとぎばなしを加えた9編のミステリ短編となっている。
それぞれは完全に独立しつながりはないのだが、一冊の本としてまとめて読んでみるとまた違う味わいが感じられる。
北村薫らしく(?)、殺人事件のようなおどろおどろしいものではなく、普通の生活の中に表現される不思議な事件がとても面白い。
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《優美なたくらみ》の正体とは??巻頭作「溶けていく」を例に。 |
収録作品は全て、過去に雑誌掲載された短篇の再掲です。
しかし、改めて一冊の本として読むと、《まさにこうして並べて出されるべきもの》と思えます。そして、どの作品も「優美なたくらみにみちた9つの謎」という紹介通り、どれも一筋縄ではいかない、いかにも北村作品らしい佇まいを持った秀作です。
一冊全ての感想をまとめると余りに長くなってしまうので、とりあえず、巻頭作「溶けていく」について、少し。
この作品の大きな魅力は、表に浮かぶ筋立ての裏面に、もう一つの描かれざる恐怖の物語が立ち上がってくることにあります。
《描かれざる恐怖の物語》とは、即ち、《美咲=読み手》の物語の裏に広がる、《作者》の物語です。
作中の漫画の作者は誰であるのか。
《彼》がその表現に込めたであろうものと、美咲がそこから独自に広げていってしまった世界との恐るべき差異。
美咲と《彼》との最後のやりとり------特にあのひとことを口にした時の、書かれざる彼の声、表情、その心の動きはどんなものであったのか。
-------そうした《描かれざる》物語に思いを馳せる時、《《美咲=読み手》の悲劇》の裏側に、《《表現を世に問う者》が抱えずにはいられない恐怖》という、隠されたテーマが見えて来ます。
字数の問題とネタバレの回避のため、詳細は省きますが、この短篇は、ある意味において、スティーブン・キング『ミザリー』よりも恐ろしい、《読者》を描いた小説なのだといえるのです。
この作品も含め、全体的に《他の北村作品も読んでいるファン向け》もしくは《熱心なミステリファン向け》というマニアックな気配が多少あるため、《誰にでもお薦め》とは言えないかもしれませんが、過去の北村作品が楽しめた人ならば、その期待は裏切られないだろうと思えます。